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読書の感想とメモです。
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posted by スポンサードリンク | | - |
どん底 部落差別自作自演事件
九州の小さな町で起こった部落差別事件。
その真相は、差別を受けた被害者の自作自演だった。
   
わたしはこの事件をまったく知らなかったのだけれど、
「自分で自分を差別しつつ、糾弾する犯人がいた」という衝撃が大きかったので手に取りました。
  
読んだあとに残ったものは、「なにもかもわからない」ということ。そのことだけ。
被差別部落の歴史、理念、ムラ社会。そういう部分も私の不勉強で難しい部分があったことは確かだけど、
それよりも犯人の動機や心の変遷がまったく分からなかった。理解できなかった。
事件前から逮捕後までを丹念に追っているのに、なぜ?どうして??という思いがぐるぐるぐるぐる渦巻く。
どんなに筆者が言葉を尽くして犯人の人物像を描いても、
どんなにたくさんの事件の関係者が腹を割って語りかけても、
犯人からはひとつも本当の言葉が返って来ない。
ただ事件の中心にいて、茫洋とそこに立っているだけ。
何を考え何を思い、何が彼をこんな事件に駆り立てたのか。
犯人は自分の行動をただ他人ごとのようになぞるだけで、決して内面に踏み入らせない。
そんな得体のしれない犯人の周辺で、翻弄され続けた関係者たちはただ頭を抱えるしかない。
たくさんの怒号も悲しみの声も、何一つ犯人には届かない。
彼は本当に人間には理解できない怪物だったのか、ただの愚者なのか。
大胆なのか小心者なのか、計算ずくなのか天然なのか。
読んでいてわたしも頭を抱えてしまった。
絶対に許される事件ではないけれど、同情するわけでもないけれど、
ただ、苦しかっただろうなと思う。自分自身にあの言葉の数々を投げつけるのは。
その瞬間の彼の心境はどんなものだったんだろう。
悲鳴が聞こえてきそうな気がする。
  
こんなことが本当にできるんだろうか?と考えると、いや・・・とも思うし、
けれど姓を変え、差別から逃げようとしつつ、部落民として手当などの甘い恩恵だけはしっかり受けてやるという
卑しい考えが浮かぶことはあるだろうな、とも思う。
だけどまっとうに生きている大多数の人は、そんな考えがふと浮かんでも実行にはうつさない。
地道にコツコツと、自分の人生を生きてゆく。それが人間なんだと思う。
彼にはそのストッパーが無かったのか、だとしたらそれは悲しいことだなと思った。
posted by ちょこれいとぼんぼん | 01:00 | 【本】ノンフィクション |
時生
泣いております(/_;)頭が痛くなるほど。
  
病に冒された息子の最期を看取るとき、
宮本拓実は若かりし日のある少年との出会いを思い出していた。
少年の名はトキオ。
トキオは宮本拓実の未来の息子だと名乗る。
堪え性がなく、嫌なことから逃げてばかりのダメ人間だった拓実は、
トキオとの出会いをきっかけに過去と今と向き合っていく。
それは自分の未来を切り拓いていくことでもあった。
   
自分は何故生まれたのか。
何のために生きるのか。
父と息子の物語でもあり、たくさんの生き方の物語でもありました。
親に捨てられたと思い込み、不貞腐れて真剣に生きることができなかった拓実。
そんな拓実にトキオは繰り返し「生まれてきてよかった」「未来はある」と語りかける。
拓実が旅先で出会う人々もまた、平坦ではなかった人生を懸命に生きていた。
そして拓実に託した両親の思い…。
持って生まれた人生のカードをどう使うのかは自分次第。
過去は変えられないかもしれない。
でもみんなそこから自分の手で未来を拓こうとしている。
それが生きる意味なのかなぁと思いました。
トキオの一言一言に本当に涙が出る。
   
そしてもう一つ考えたのが、私の両親にもこんな青春時代があったんだろうなぁということ。
両親の過去を覗いてみたいような、想像すると笑っちゃいそうな。
でもきっと両親がどんなに情けない若者だったとしても、
わたしは文句を言いつつそばにいると思う。
そして人生を授けてくれたことに感謝の気持ちを伝え続けるだろう。
トキオ君のように勇敢な行動はできないかもしれないけれど。
posted by ちょこれいとぼんぼん | 20:22 | 【小説】人生 |
虎よ、虎よ!
海外ものの本格SF、初挑戦。
最初は身構えていたのだけれど、すぐに魂を揺さぶられることになりました。
すごい小説を読んでしまった。
さすが数々の作品の礎となった小説だと。
  
舞台は25世紀。
宇宙で遭難し、顔に虎斑の刺青を入れられてしまった男・フォイルは、
彼を見捨てた人々への復讐を決意する。
フォイルはめちゃくちゃ粗野でめちゃくっちゃかっこいいダークヒーローで、
わたしも彼と一緒に酩酊して流浪して爆発しました。
クライマックスでは彼の変化とともに文字までもがぐにゃぐにゃ曲がったり、
破裂したり点滅したり、ページ全体がすさまじいレイアウトになっているのだけど
そこから放たれるエネルギーとか、フォイルの怒りや熱にあてられて
なかなか興奮がおさまらない(><)
  
フォイルの前に現れる女性たちの強かさや、二転三転するストーリーも面白くて
前のめりになって一気読みしました。
そして本当に酔った(笑)
この吸引力と爆発力はすごすぎる!
力のある小説って、読み手までもを巻き込んで物語にしてしまうんだ。
  
贅沢な読書体験ができました◎
posted by ちょこれいとぼんぼん | 01:58 | - |
火車
再読。
初読は高校生の時で、大きな衝撃を受けたと同時に
「もうしばらく読めない。読みたくない」とまで思ったことを覚えています。
新城喬子の人生が、まだ子供だった私にはあまりにも重すぎて。
  
時間を経てやっと再びこの本を手にすることができたけれど、
やはりこの物語を受け止めるにはまだまだ私の心は幼くて弱い。
初めて読んだ高校生の時も、今回も、
読み終えてまっ先に出たのは「どうして・・・」という思いだけで、
ただただこの圧倒的な物語に言葉を失うばかりだった。
  
だけど、高校生のころはひたすら「重い、つらい」という感じていた喬子の生き方を、
今回は「哀しい」と思った。
それは彼女に近い年齢になったからかもしれないし、
喬子や彰子の苦しみに共感できるようになったからかもしれない。
  
「あるべき自分」と「こうなりたい自分」と「ここにいる自分」。
だれでもその狭間で葛藤することはあるけれど、少し足を踏み外しただけで
こんなことになってしまうなんて。
「ただ幸せになりたかっただけなのに」という言葉に胸がつまった。
幸せになるためにもがけばもがくほど、地獄に落ちていく喬子と彰子。
そしてその姿をボウゼンと追うことしかできない自分。
なんだか「こうなりたい自分」と「ここにいる自分」の写し鏡のように思える。
どんなに辛かっただろう…。
街行く若者や家族連れの笑顔を、彼女たちはどんな気持ちで眺めていたんだろう…。
ただただ哀しい。
  
この当時に比べて、今は自己破産や債務整理という選択もずいぶんポピュラーになっていると思うけれど、
溝口弁護士が言うようにやはり根本的なところでの教育が必要だと感じた。
これだけ情報や欲望が溢れている現代で、地に足をつけて生きるのはほんとうに大変なこと。
なんだか自分の立っているこの場所が薄氷の上のように思えてくる。
人は簡単に奈落へ落ちる。
無知は人を殺す。
そのことを覚えておかなくては。
posted by ちょこれいとぼんぼん | 02:28 | 【小説】ミステリ・サスペンス |
泥の河/蛍川/道頓堀川
幼い頃の夏の日、思春期の転機、大人になるということ。
川のある町に住む人々の人生を描いた小説集。
  
初めて読んだのは中学生の時だったと思う。
大人になった今、読み返して改めて感じたことは、
どの物語にも戦争の影が色濃く落ちているということ。
それが悲劇だと感じないくらい、誰もがなんらかの形で戦争を引きずっているということ。
過去を背負いながらも泥臭く生きる男たちと、
多くを語らずただ粛々と生きる女たちと、
そんな大人たちの背中を追いながら成長していく子供たち。
  
劇的な事件が起こるわけではないけれど、
名も無き人々の生きる姿を通して、誰のどんな人生にもかけがえのない物語があるということを教わった思いです。
ここに出てくる人物たちの幸せを祈らずにはいられない。
ひとりひとりの人生が、涙がでるほど大切なものに思える。
川の向こうや雪の彼方やネオンの裏側にあるたくさんの人生を肯定したい。
大げさだけど、そんな気持ちになりました。
  
きっとこれから先も何度も読み返すんだろうな。
大切な一冊になりそうです。
posted by ちょこれいとぼんぼん | 22:39 | 【小説】人生 |